日本の GNSS · 6本中の1 · 出典に日付あり
みちびき(QZSS):2026年の空にある機体と、各信号の中身
マルチ GNSS の受信機を持って日本に着くと、見たことのない 190 番台の PRN を追い始めます。それが準天頂衛星システム QZSS、みちびきです。この頁は技術者に要る最小限をまとめます。2026年8月時点で何が上がっているか、各信号が何を運ぶか、どの部分に専用の受信機が要るか。
QZSS を一段落で
QZSS は内閣府が運用する地域航法衛星システムです。衛星は 8 の字を描く準天頂軌道(と静止軌道が1枠)を飛び、いつでも少なくとも1機が日本のほぼ真上にいるように配置されています。高い仰角がこの仕組みの核心です。ビルや尾根に GPS 衛星が隠れる都市や山地でも、天頂近くの衛星は見え続けます。信号は GPS と相互運用できるよう設計されているので、GPS の L1C/A、L2C、L5 を追える受信機なら、特別な部品なしに QZSS を測距の追加の衛星として使えます。
2026年8月時点で軌道にあるもの
公式のサービスは 2018年11月から 4 機体制で続いています。計画は 7 機への拡張で、そうなれば日本上空では QZSS 単独でも測位が持続します。執筆時点の状況は次のとおりです。
| 機体 | 状態(2026年8月) | 備考 |
|---|---|---|
| QZS-1R(みちびき初号機後継) | 運用中 | 2010年の初号機の後継。2021年打ち上げ |
| QZS-2、QZS-3、QZS-4 | 運用中 | 2017年打ち上げ。3号機が静止軌道 |
| QZS-5 | 喪失 | 2025年12月の打ち上げ失敗 |
| QZS-6 | 2025年2月打ち上げ | 拡張分の1機目 |
| QZS-7 | 2026年8月11日打ち上げ(H3) | NORAD 100270。初期運用段階。現在位置は /sat/qzs-7 |
したがって当面は 6 機で落ち着きます。政府は 2030 年代に追加の衛星を計画すると述べていますが、5号機の直接の代替はありません。各機がいまどこにいるか、軌道の実測された形は衛星の一覧の各頁に、ある地点の空に何機立っているかは地形込みで KUON SKY にあります。
追跡の道具を作る人への注記。7号機のカタログ番号は 6 桁です。旧来の TLE 形式は 5 桁までしか持てないので、CelesTrak に TLE で問い合わせても何も返りません。軌道要素は OMM(JSON)で取り込んでください。KUON GEO は 2026年8月21日に切り替えました。
信号と、それぞれを使える受信機
| 信号 | サービス | 要る受信機 |
|---|---|---|
| L1C/A、L1C、L2C、L5 | 測位・航法・時刻(GPS と相互運用) | QZSS 対応を謳うマルチ GNSS 受信機なら何でも |
| L1S | SLAS(日本向けのサブメートル級補強)と災危通報 | L1S を復号できる受信機(民生のチップに多い) |
| L5S | 測位技術実証 | 実験用 |
| L6D | CLAS(日本向けのセンチメートル級補強) | L6 対応の専用受信機か復号器 |
| L6E | MADOCA-PPP(アジア・オセアニア向けの精密単独測位) | L6 対応の専用受信機か復号器 |
| L1Sb | SBAS(航空型の広域補強) | SBAS 対応受信機 |
| S 帯 | 衛星安否確認サービス(Q-ANPI) | 専用端末 |
実務上の線引きは単純です。L1、L2、L5 に乗っているものは、手持ちの受信機にとって無料の追加衛星です。設定で QZSS が有効になっているかだけ確かめてください。日本の外向けのファームウェアでは切られていることがあります。L6 に乗っているものが日本に固有の部分で、L6 帯を復調できる機材が要ります。CLAS と MADOCA-PPP はここにあり、それぞれ別の頁で扱います。
実際に何が変わるか
三つです。第一に衛星の数。北海道の開けた畑でも大阪の街路でも、同じ緯度の他の場所より使える衛星が多く見えるのが普通で、天頂近くの1機は高さ方向の精度に効きます。第二に L1S の SLAS で、通信なしにサブメートルの測位ができます。記録の用途ならこれで足りることが多い。第三に L6D の CLAS で、日本国内なら基準局も通信もなしに、空からだけでセンチメートル級の測位ができます。それが自分の仕事で RTK の代わりになるかは、受信機と、仕様への許容で決まります。数字は CLAS の頁に並べました。
出典
内閣府 QZSS is becoming a seven-satellite constellation(2018年11月からの4機体制、7機計画)。The Register 2026年8月11日(7号機打ち上げ、2025年12月の5号機喪失、2030年代の計画)。ESA Navipedia QZSS(信号の一覧)。軌道要素は CelesTrak の OMM をこのサイトで伝播しています。
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