みちびきは今、何機動いているのか
「みちびき」を調べると、7機体制という言葉が必ず出てきます。ところが2026年9月の時点で、実際に動いているのは5機です。公式サイトも「7機体制構築に向けて、開発・整備を進めています」としか書いていません。何が起きて、いつ7機になるのか。分かっている事実だけを、時系列で並べます。
いま動いているのは5機
内閣府が2026年3月時点でまとめた資料では、みちびきは5機で運用中、測位精度は5〜10m、センチメータ級の補強情報を使ったときで最高6cmとされています。
同じ資料の他国の欄はこうです。GPS(米国)31機、GLONASS(ロシア)24機、Galileo(欧州)27機、BeiDou(中国)45機、NavIC(インド)4機。
みちびきの数が少ないのは、遅れているからではありません。地球全体ではなく、日本とその周辺だけを対象にした地域システムだからです。同じ理由でインドの NavIC も4機です。
2025年12月22日、5号機が失われた
H3ロケット8号機は2025年12月22日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、失敗しました。搭載されていたみちびき5号機は喪失しています。
JAXA が2026年1月20日に示した原因究明の進捗によると、打ち上げから225秒後の衛星フェアリング分離時に異常な加速度が発生し、これを起点として衛星搭載構造の一部が損傷・破壊、衛星が早期に離脱していた可能性が高いとされています。第2段の液体水素タンクの圧力も徐々に低下し、第2段エンジンの2回目の燃焼が正常に立ち上がらず早期に停止しました。
2026年8月11日、7号機は成功した
台風の接近で延期を重ねたのち、2026年8月11日午前4時23分、みちびき7号機を載せた H3ロケット9号機が打ち上げられ、成功しました。
7号機が入るのは準静止軌道です。静止軌道では0になっている軌道傾斜角と離心率がわずかに与えられているため、地上からはゆっくり動いて見えます。2025年2月に H3ロケット5号機で上がった6号機は静止軌道で、こちらとは軌道が違います。
それでも、7機にはならない
7号機が2027年2月から3月に運用可能になると、みちびきは6機になります。当初計画の7機体制には1機足りません。5号機の分が埋まっていないからです。
内閣府は、7機体制と比べてカバーエリアが縮小し、日本国内、特に北部で測位精度が下がるとしています。ただし準天頂軌道を回る衛星の配置を見直すことで、6機でも一定の精度向上は図れるとしています。
7機が必要な理由は、4という数字にある
測位には、最低4機の衛星が同時に見えている必要があります。3機で位置の3つの成分を解き、残りの1機で受信機側の時計のずれを解くためです。
日本の上空に常に4機を置くには、8の字を描く準天頂軌道に合計7機が要ります。1機が日本の上空にいる時間は限られているので、交代で入れ替わる必要があるからです。
7機に届かない間、みちびきだけで測位を完結させることはできません。GPS や Galileo と組み合わせて使うことになります。これは日常の不便というより、他国のシステムに依存し続けるという意味を持ちます。
スマホで1mを目指す計画は、遅れた
JAXA は5・6・7号機で ASNAV という高精度測位システムを実証しています。特別な受信機を使わず、手元のスマートフォンで1m級の測位を実現することが目標です。
ところが、衛星どうしの距離を測る送信機能を持っていたのは5号機だけでした。その5号機が失われたため、実証は後ろへずれています。実用化は3年程度を目処とされ、その段階での精度は最高1.6m程度の見込みとされています。
11機体制は2030年代後半
7機であっても、1機でも故障すれば常時4機を維持できなくなります。この弱さを埋めるために計画されているのが11機体制です。運用開始は2030年代後半の見込みで、既存の3号機の後継機と8号機の開発が始まっています。
2機を1本のロケットで打ち上げるために衛星を薄くする案も進んでいます。みちびきは初号機から7号機まで、三菱電機の DS2000 という共通の土台を使っています。
いま、みちびきは空のどこにいるか
何機あるかという数字だけでは、自分のいる場所から何機見えるかは分かりません。ビルや山に遮られれば、空にあっても使えません。
KUON ORBIT では、みちびきを含む各国の測位衛星の現在位置を表示しています。KUON SKY では、地点を選ぶと、その場所でこれから見える衛星の数と配置(DOP)を予測できます。数字ではなく、自分の空で確かめるための道具です。
出典と、この記事の限界
内閣府 みちびき公式サイト(qzss.go.jp)、JAXA の打上げ前ブリーフィング資料(2026年8月5日)、H3ロケット8号機の打ち上げ失敗に関する JAXA の原因究明報告(2026年1月20日)、および報道各社の記事に基づきます。
数値と日付は2026年9月時点のものです。運用機数と体制は今後変わります。最新の一次情報は内閣府の公式サイトで確認してください。