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RTKとは?、センチメートル級測位のしくみ

スマホのGPSは、いつも数メートルずれます。ところがRTK(リアルタイム・キネマティック)を使うと、同じ衛星から数センチメートルの精度で位置が分かります。測量・精密農業・ドローン・建設機械・自動運転、「cmで位置が要る」現場すべての土台がこの技術です。専門用語を使わずに、そのしくみを解説します。

なぜ普通のGPSは数メートルずれるのか

GNSS(GPS等の総称)は、宇宙の衛星が出す電波の「届くまでの時間」から距離を測り、複数衛星から自分の位置を計算します。でもその電波は、宇宙から地上へ来る途中で電離層や大気(対流圏)を通り抜ける際に少し遅れ、さらに衛星の軌道や時計にも微小な誤差があります。1台の受信機だけではこれらを取り除けず、位置は数メートルずれます。

RTKのしくみ、基準局が誤差を「打ち消す」

ここで基準局が登場します。基準局は座標が正確に分かっている、固定されたGNSS受信機です。あなたの受信機(ローバー)と基準局は、同じ空・同じ瞬間の電波を受けるので、ほぼ同じ誤差を受けています。基準局は自分が受信した衛星データ(と自局の正確な位置)をそのまま送り、ローバー側で両者のデータの差を取ります。すると共通の誤差が打ち消され、cm精度に到達します(差分測位)。基準局が「補正を作って渡す」のではなく、両者の観測の差を取ることで誤差が消える、という点がRTKの核心です。

さらにRTKは、電波の「山の数(搬送波位相)」まで数えます。GNSSの波長は約19cmと短いので、この山を正確に数えられれば非常に高い精度が得られます。基準局とローバーの距離(基線)が短いほど、両者の誤差がよく似るため精度が上がります。

補正はどうやって届くのか、NTRIP

基準局の補正データ(RTCMという形式)は、多くの場合NTRIPという仕組みでインターネット配信されます。NTRIPキャスター上の「マウントポイント」に接続すると、その基準局の補正がリアルタイムで受け取れます。世界には有志が公開する基準局が数千あり、KUONの基準局ランキングや地図でその位置と稼働状況を確認できます。

Fix と Float、「解けた」か「解けていないか」

搬送波位相の「山の数」は本来整数です。これが正しく解けた状態をFix(フィックス)と呼び、cm精度が得られます。まだ解けきれていない状態はFloat(フロート)で、精度はデシメートル級にとどまります。空が開けている・基線が短い・時間をかける、ほどFixしやすくなります。

基準局がなくても、みちびき(QZSS)CLAS

日本の準天頂衛星みちびき(QZSS)は、L6という信号でCLASという補強情報を放送しています。対応受信機なら、地上の基準局に接続しなくても、みちびきから受け取った補強だけでcm級測位ができます。基準局のインフラが届かない場所でも高精度が狙えるのが強みです。

どこで使われている?

測量(境界・地形)、精密農業(トラクターの自動操舵・畝単位の管理)、ドローン測量、建設機械の自動制御、点群・3Dマッピング、そして将来のロボット・自動運転、「機械が正確に自分の場所を知る」必要があるすべての領域です。RTKが安く手に入るようになったことで、これらが個人にも降りてきつつあります。

RTK は何の略か

Real Time Kinematic(リアルタイム・キネマティック)の略です。キネマティックは「動いている状態で」という意味で、据え置かずに移動しながら測れることを指します。

リアルタイムという語が入っているのは、その場で答えが出るからです。同じ精度を後から計算で出す方法(後処理キネマティック・PPK)もありますが、こちらは現場で結果を見られません。杭を打つ、機械を動かす、といった作業は、その場で答えが要ります。

基準局は、自分で建てるか、借りるか

RTK には基準局が要ります。位置の分かっている場所に据えた受信機で、そこで観測した誤差を移動局へ送ります。「基地局」と呼ばれることもありますが、同じものを指しています。

選択肢は三つです。自分で建てる。受信機とアンテナと通信手段を用意し、正確な座標を出して据えます。初期費用はかかりますが、以後は自分の都合で使えます。

有料のサービスを契約する。国内には全国をカバーする配信事業者があり、月額または年額で使えます。基線長を気にせず、どこでも使えるのが利点です。

公開されている局を使う。世界には無償で開放されている基準局が多数あります。KUON GEO はその一覧を 2,400 局以上、実測の死活とともに公開しています。近い局ほど誤差が消えやすいので、地図の上で最寄りを探せる形にしてあります。

「無料の基準局」を探している方へ

無料で使える公開局は実在します。大学、研究機関、企業、個人が、自分の受信機を開放しているものです。ただし、あることと、使えることは別です。

確かめるべき点が三つあります。いま生きているか(公開局は予告なく止まります)。自分の場所からどれだけ離れているか(RTK の精度は基線長で落ちます。10km を超えると Fix が渋くなり始めます)。対応している衛星系と信号(自分の受信機と噛み合わないと使えません)。

KUON GEO の一覧は、この三つを見るために作りました。局ごとの死活と、対応衛星系の充実度と、最寄り8局を並べてあります。

ネットワーク型RTK(VRS)との違い

一つの基準局に繋ぐ方式に対し、複数の基準局の観測をまとめて、あなたのすぐ近くに仮想の基準局があるかのような補正を作る方式があります。VRS(仮想基準点)などと呼ばれ、国内の有料サービスの多くがこの形です。

利点は、基線長の制約が実質なくなること。どこにいても近くに基準局があるのと同じ補正が届きます。欠点は、費用がかかることと、配信網が落ちるとどうにもならないことです。

単独の公開局は無償ですが、近くに無ければ精度が落ちます。用途と場所で選び分けるものであって、どちらが上ということはありません。

RTKLIB という選択肢

RTKLIB は、RTK と後処理の計算を行う、広く使われている無償のソフトウェア群です。市販の測量機を買わずに、受信機モジュールとパソコンで RTK を組む人の多くがこれを使っています。

できることは幅広く、そのぶん設定項目も多い。仰角マスク、比の閾値、電離層と対流圏のモデル、どの信号を使うか。既定値のままでも動きますが、Fix しない現場では、この設定を一つずつ確かめることになります。

生観測データの形式(RINEX)についてはRINEXとは?にまとめました。

ドローンで使うとき

空撮から地形を作る作業では、RTK の有無が後工程を大きく変えます。写真一枚ごとの撮影位置がセンチメートル級で分かっていれば、地上に置く標定点(GCP)を減らせます。

GCP は、地上に印を置いて座標を測る作業です。山や、立入りの難しい場所では、これが最も時間のかかる工程になります。RTK 付きの機体は、その手間を減らすために使われています。

ただしゼロにはなりません。高さの検証や、成果の確からしさを示すために、いくつかは残します。詳しくはGNSS測量とドローン測量に書きました。

費用の目安

受信機モジュール(基板)は数万円から。アンテナが数千円から数万円。この組み合わせに RTKLIB と公開基準局を足せば、十万円を切る構成も現実に組めます。実際、そうやって自作している人は少なくありません。

一方、測量成果として使う測量機は、一台で数十万円から百万円台です。差は、精度そのものより現場で一日使い切れることと、成果の保証にあります。

どちらが必要かは用途で決まります。自分の畑を測るのか、境界を確定するのか。前者に測量機は要らず、後者に自作機は使えません。