雨の日、猫は3分の2しか動かない
「雨だから遠くへは行っていないはず」。捜索の現場でよく言われることですが、これには実測された数字があります。デンマークで飼い猫97匹にGPSを付けた研究です。ただし、その数字が何の数字なのかを取り違えると、探し方を誤ります。
測られた数字
Denmark の GPS 研究(Animals 12(14), 1748)は、屋外に出られる飼い猫97匹にGPSを付け、約7日間追跡しました。飼い主から猫の情報も集めています。
1日に動いた距離の平均は、こうでした。
雨のない日 3.6km(95%信頼区間 2.8〜4.5km)
強い雨の日 2.4km(95%信頼区間 1.6〜3.5km)
およそ3分の2です。信頼区間が重なっているので「必ず3分の2になる」とは言えませんが、雨の日に猫が動く量が減ることは、この研究の中では確かめられています。
同じ研究が測った、ほかのこと
この研究は雨以外にも報告しています。
家を離れていた時間は1日あたり中央値5時間(四分位範囲 2.5〜8.8時間)。1日の移動距離の中央値は2.4km(1.3〜3.7km)。行動圏の中央値は5ヘクタール(2.9〜8.5ヘクタール)。
7歳を超えた猫は、家を離れる時間が短く、動きが少なく、行動圏も狭い傾向がありました。自然の多い場所に出られる猫は、その逆でした。去勢していないオス4匹は行動圏が広く出ています。
ここで気をつけること
この3.6kmと2.4kmは「ふだん外を歩いている猫が、1日に歩く距離」です。逃げた猫が脱走地点からどれだけ離れた場所で見つかるか、という数字ではありません。
後者は別の研究にあり、失踪猫1,210件の論文では発見距離の中央値が約50m、完全室内飼いなら39mでした。1日に2.4km歩く猫が、39mの場所で見つかる。矛盾ではありません。歩き回る距離と、最終的にいる場所は別物だからです。
逃げた猫は、慣れない場所で身を隠します。歩き回らずに一箇所にとどまることのほうが多い。雨の日の数字を、探す範囲を狭める根拠に使ってはいけません。
では、何に使えるのか
探す順番です。
雨の日に猫が動かないなら、猫はいま雨をしのげる場所にいます。屋根のある場所、風の当たらない場所、地面が濡れていない場所。
デッキやポーチの下。ガレージ。物置。停まっている車の下。階段の下。ゴミ置き場の屋根。物陰に置かれた段ボール。
この並びは、失踪猫1,210件の論文が挙げた発見場所と重なります。他人の庭、茂み、デッキ・ポーチ・テラスの下、ガレージ、家具の後ろ、地下室。もともと猫が見つかる場所は、雨をしのげる場所とほぼ同じです。雨はそれを強めるだけです。
囲われた猫では、また違う結果が出ている
2025年の研究(Animals 15(5), 637)は、7匹の研究猫に加速度計を付けて1年のうち13週間を測りました。気温・湿度・風を合わせた指数と日の長さが行動に効き、雨が増えると毛づくろいと爪とぎが減ったと報告しています。
ただしこの研究では、雨は活動そのものの時間には効きませんでした。論文自身が、対象が動ける範囲の限られた研究猫であり、自由に歩き回る猫を扱った他の研究とは条件が違うためだろう、と書いています。
囲われた猫と、外を歩く猫は、別に考える必要があります。逃げた猫に近いのは後者です。
分かっていないこと
雨が失踪した猫の行動にどう効くかを直接測った研究を、私たちは見つけられませんでした。
上の数字はいずれも、ふだんどおり暮らしている猫のものです。恐怖の状態にある猫が、雨に対してどう振る舞うか。ここは測られていません。
気温・湿度・風についても同じです。捜索の道具ではこれらを記録として表示していますが、探す範囲は変えていません。変える根拠がないからです。
実務としての結論
雨の日、あるいは雨の降った日の捜索では、次の順で見てください。
1 屋根のある場所を先に。デッキ下、ガレージ、物置、車の下、階段下。
2 開けた場所は後回し。雨の中を歩いている可能性は低い。
3 範囲は狭めない。雨は「どこを先に見るか」を変えますが、「どこまで見るか」は変えません。
そして雨が上がったあと、猫は動き始めます。雨上がりは、もう一度同じ場所を見る価値があります。